相続・遺言に関する問題

取扱分野

遺産の処理の仕方がわからない

相続が開始すると、相続財産は、相続人の共有になります。この共有の状態を解消するには、遺産分割によって、最終的な帰属を決定することが必要になります。

遺産分割協議の結果、例えば、A銀行の預金は、長男が相続し、B銀行の預金は、長女が相続するというふうに決めたとします。

この場合には、決めた内容に従って、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印で押印して、印鑑証明書を添付します。

そして、遺産分割の協議書と被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を持っていけば、それぞれの銀行で相続の手続きをすることができます。

被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍は、相続人の範囲の確定のために必要なものです。一度集めたら、法務局で、法定相続情報の証明書を作成してくと、預金の解約や不動産の名義変更に利用できて便利です。

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遺産分割がスムーズにいかない

遺産分割は、相続人全員の同意がなければ成立しません。兄弟間の対立が激しかったり、相続人が多かったりすると、同意による成立は難しくなるでしょう。

そのような場合は、第三者を入れて話し合うしかありません。

そこで、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。調停では、調停委員会(調停委員2名と裁判官1名)の仲介のもとで、遺産の分割の方法について話し合います。

後述するような寄与分特別受益で揉めている場合でも、遺産分割の調停の中でまずは話し合いをするのが一般的です。

遺産分割調停による話し合いでも合意に至らない場合には、遺産分割の審判に移行します。審判では、裁判官が遺産分割の方法を決めます。

なお、寄与分については、別に寄与分を定める調停や審判がありますので、これらも利用して遺産分割の審判の前に寄与分を決めておくことになります。

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ずっと亡くなった人の面倒を見てきたが、多めに財産の相続をできないか

このような場合には、寄与分が請求できないかを考えます。

寄与分とは、例えば、家業を継いで、父母と一緒に事業を助けてきて、父母の財産を増やすことに貢献してきた子に報いるための制度です。

民法904条の2では、「事業に関する労務の提供、財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法」によって、「被相続人の財産の維持又は増加」のために「特別の寄与」をした相続人に寄与分が認められるとされています。

近年では、寄与分は、介護との関係で問題になることの方が多くなっています。確かに在宅介護の過酷さを考えれば、介護に貢献した相続人に報いることが公平であるように思います。

しかしながら、寄与分とはあくまでも、「相続財産の維持・増加に貢献したこと」が必要です。介護だと、相続人の一人が介護をしたおかげで、付添人などを頼む必要がなかったため、その分だけ、遺産の減少を防いだという事情が必要です。

また、寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に寄与しながら、その生前中に対価・補償を受けていなかった場合に、公平の観点から、相続のときにその寄与に応じた特別の持分を与えることを言うため、介護の対価として生活費をもらっていたというような場合には、寄与分は認められにくくなります。

また、介護は、「扶養義務」の範囲を超えた「特別なもの」である必要があり、介護を相当長期間行っていて、その介護がその相続人の生活の中心になるくらいの負担であったことが必要ともいわれています。

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相続分に納得がいかない

法定相続分は、民法によって決まっています。これを変えるには被相続人が遺言を作成していたか、相続人全員の合意で変えるかしかありません。

それでも、納得がいかない場合というのは、おそらく、私がずっと、母の面倒をみてたのにとか、兄の方が、被相続人の生前、利益を受けていたじゃないかとかそういう不公平感から来るものでしょう。こういう不公平感をなくすために、寄与分と特別受益という制度があります。

寄与分とは、例えば、家業を継いで、父母と一緒に事業を助けてきて、父母の財産を増やすことに貢献してきた子に報いるための制度です。
詳しくは「ずっと亡くなった人の面倒を見てきたが、多めに財産の相続をできないか」をご参照ください。

一方、特別受益とは、「婚姻のため」「養子縁組のため」「生計の資本として」の贈与を受けていた場合、被相続人から贈与を受けた相続人と、他の相続人との公平を図るために設けられた制度で、もらった贈与や遺贈を相続財産に一旦戻して(これを「持ち戻し」といいます)、それぞれの取り分を計算するという制度のことです。つまり、生前にもらいすぎていた分を相続のときに調整するための制度ということです。 「生計の資本としての贈与」には、生活費の援助のほか、大学の資金、独立のための開業資金、自宅購入資金などが含まれます。

例えば、長男、次男、長女のうち、長男は大学に行かせてもらい、長女は結婚資金を受け取ったと仮定します。大学の費用が600万円、結婚資金が300万円、遺産が3,000万円だったとしたら、大学の費用600万円と結婚資金300万円を持ち戻して、遺産総額を3,900万円とみなし、3人で1,300万円ずつとします。長男はすでに600万円もらっているので、700万円をうけとり、長女は、300万円もらっているので、1,000万円を受け取ります。そうすると、二男は、1,300万円を受け取ることになり、公平になったと言えます。

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相続放棄って何?

相続放棄とは、相続が開始した後に、相続人が、被相続人の地位や財産の相続を拒否するという意思表示です。

他の相続人に「おれは相続放棄する」と宣言するだけではダメで、「自己のために相続が開始したことを知ったとき」から3ヶ月以内家庭裁判所で相続放棄の手続きをする必要があります。

相続放棄をした人は、最初から相続人ではなかったことになります。

その結果、残った相続人の相続分が変化します。

例えば、父A、母B、2人の子供C、Dの4人家族で、父親が亡くなった場合、法定相続分は、母Bが2分の1、CとDがそれぞれ4分の1です。

しかし、Cが相続を放棄した場合には、相続人は、最初から、母BとDの2人だったという扱いになり、母が2分の1、Dが2分の1の相続分を持ちます。

仮に、CとDが2人とも相続放棄した場合には、次順位の相続が開始しますので、配偶者である母Bと父Aの父母(C、Dの祖父母)が相続人になります。

相続放棄した人は、相続人ではないので、何の財産も相続できなくなります。そして、被相続人の借金を負う必要もなくなります。

家庭裁判所から受け取る「相続放棄の受理証明書」を提出すれば、被相続人の債権者から取立を受けることもなくなります。

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遺言書が出てきた。どうしたらいい?

遺言書が出てきた場合、安易に開封してはいけません。

自筆証書遺言及び秘密証書遺言は、家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があるからです。

検認とは、遺言書の存在及び内容を確認する手続きのことです。

検認手続きは、遺言書を保管していた人や、発見した人が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることによって行います。検認には、法定相続人が立ち会うことができます。

検認を経ない自筆証書遺言や秘密証書遺言では、遺言内容の執行ができません。

公正証書遺言の場合は、検認の必要はなく、そのまま遺言の執行が可能です

なお、遺言を誤って開けてしまうと、5万円の過料となります。ただし、遺言を誤って開けてしまっても、遺言自体は有効ですし、開けた人が相続権を失うということはありません。

しかし、遺言を偽造、変造したり、隠したり破いたりすると、相続人の欠格事由に該当することになりますので、相続を受けることができなくなります。

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遺言書を書きたい

遺言書(普通方式遺言)には、

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

の3種類があります。

自筆証書遺言とは、本人が直筆で記載する遺言です。

自筆証書遺言は必ず、

  • 全文手書きすること
  • 日付を書くこと
  • 署名・押印すること

が必要で、このどれかを欠いていたら、法的に無効となります。

公正証書遺言とは、公証役場で、公証人に作成してもらう遺言です。

秘密証書遺言とは、自分で遺言書を作成して、署名押印したあと、その遺言書を封筒にいれて、封をし、さらに、同じ印鑑で封印して、これを公証役場に持って行くという方法によって行う遺言です。

自筆証書遺言のように全文手書きである必要はなく、パソコンで打った文書でも可能です。ただし、署名は必ず自筆で行う必要があります。また、証人2人以上必要です。

自筆証書遺言には、文書の加除訂正などに細かい決まりもあり、内容が効力を持たないこともありえます。公正証書遺言は、公証人が作成しますし、遺言の原本は、公証役場に保管されますので、偽造されたり、隠匿されたりという心配もないというメリットもありますが、費用がかかるというデメリットもあります。

どの方法を選ぶかは、遺産の額やどのような遺言をしたいかにもよるでしょう。

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自分の死後、財産を相続させたくない人がいるが、どうしたらいい?

自分の財産を誰にどのように相続させるかということについて、遺言書を作成しておくということになります。

ただし、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分がありますので、相続を0にすることは難しいです。

推定相続人の廃除という制度もあります。これは、遺留分を持っている推定相続人をあらかじめ廃除できる制度です。

廃除できるのは、自分に対して、虐待をした推定相続人や、自分に対して重大な侮辱を加えた推定相続人、重大な非行がある推定相続人などで、家庭裁判所の調停もしくは審判を経ることが必要です。

ただし、家庭裁判所では、多少の不仲や、被相続人にも一定の原因のあるような場合では、廃除は認められにくく、「相続人の行為が、相続的協同関係を破壊する程度に客観的に重大なもの」でなければ、廃除は認められないとされており、廃除が認められるケースは少ないと言われています。

なお、廃除は遺言によってもできます。遺言書に廃除の意思が記載されていた場合には、遺言執行者が、家庭裁判所に廃除を請求します。これが認められるかどうかは、上記のような基準に適合するか否かによります。

婚姻関係や親戚関係のない人に自分の財産を相続させたいが、できる?

遺言書を作成しておけば、婚姻関係や親戚関係のない人に自分の財産を相続させることが可能です。

ただし、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があるので、すべての財産を相続させるのは難しい場合があります。

遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して法律上取得することが保障されている遺産の一定の割合のことで、つまり、相続財産に対する最低限の取り分のことです。

遺留分の割合は、配偶者と子(直系卑属)の遺留分は、本来の相続分の2分の1です。ただし、配偶者も直系卑属もおらず、父母のみが相続人である場合には、本来の相続分の3分の1です。

遺言を作成する場合には、この遺留分を考慮しておかなければ、婚姻関係や親戚関係のない人を相続の紛争に巻き込むことになってしまうため、注意が必要です。

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不動産を特定の人にだけ相続させたい

この場合も遺言によることになります。

遺言書によって「Aに自分の財産のうち、B不動産を相続させる」というように、相続財産のうちの特定の財産を相続させることを特定遺贈といいます。

遺言は、被相続人が死亡したときから効力を持ちますから、相続の開始時、つまり、被相続人が亡くなった瞬間から、B不動産はAのものになります。そのため、特定遺贈の受遺者は、遺産分割協議を経ずに、指定された遺産をもらうことができます。また、遺贈を受けるのを放棄することもできます。

なお、Aが相続人の一人だった場合、つまり、「相続人AにB不動産を相続させる」というような遺言である場合には、「遺産分割の方法」が指定された遺言であると解釈されます。そうすると、相続人は、B不動産はAが取得するということを前提にその他の遺産について、遺産分割の協議をすることになります。

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